【どうして】答えがすぐには出てこない〈リク編 第3話〉

リク編 第3話「どうして」アイキャッチ リク編

このページは、リク編 第3話「どうして」の絵本ページです。靴をはかないまま外に出たリクが、お父さんの一言で立ち止まる場面を描いています。絵本のあとに、ことばのページ・本文書き起こし・保護者向けの読み取りメモを掲載しています。

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ことばのページ|読み終わったあとに親子で話す問い

リクは、どうして、
くつをはかなかったのかな?

「……くつ」って、
おとうさんは、言ったね。
どんなこえだったのかな?

ぽたっと、なにかが、おちた。
リクは、どんなきもちだったのかな?

でも、むねのなかは、
まだ、あたたかかった。

📝 本文書き起こし

外は、あたたかかった。土のにおいがしていた。

リクは、家の前にいた。くつは、玄関にあった。でも、はかなかった。

リクは、走った。石を、ひろった。葉っぱを、ふんだ。足が、つめたくなった。

「リク!」後ろから、声がした。リクは、止まった。

おとうさんが、立っていた。リクの足を、見た。「……くつ」それだけ言った。声は、強かった。

リクの胸が、きゅっとなった。言おうとした。でも、ことばが、出なかった。目が、あつくなった。のどが、つまった。ぽたっと、なにかが、落ちた。

おとうさんは、しばらく、そのまま立っていた。それから、玄関の方を見た。「入るぞ」

リクは、あとを歩いた。

しばらくして。外は、さっきより、しずかだった。リクは、歩いていた。前を、ルリが歩いていた。ときどき、止まる。リクも、止まった。また、歩いた。

少し離れたところに、コーキがいた。こちらは、見ていなかった。

ルリが、立ち止まった。リクの方を、少しだけ、見た。リクは、足もとを見た。くつは、はいていた。さっきのことを、考えようとした。でも、うまく、まとまらなかった。ルリが、また、歩きだした。リクも、歩いた。

涙は、もう、出なかった。でも、胸の中は、まだ、あたたかかった。

📖 保護者向けの読み取りメモ

第3話「どうして」は、靴をはかないまま外に出たリクが、お父さんの一言で立ち止まり、涙をこぼす場面を描いています。「どうして?」という問いに答えが出ないまま、それでも胸の中に温かさが残る物語です。

1. なぜリクは、靴をはかなかったのか

「はかなかった」のではなく、気づいたら外に出ていたのかもしれません。子どもの体は、内側の何かが動いたとき、言葉より先に動くことがあります。「どうしてそうしたの?」と問われても、本人にも答えられない。それが、この話の「どうして」です。

2. 「……くつ」という一言

お父さんはたった一言だけ言いました。責めていたのか、心配していたのか、確認していたのかはわかりません。でも声は、強かった。大人の意図と、子どもへの届き方はちがいます。短い言葉ほど、受け取り方で重さが変わります。

3. ぽたっと、なにかが落ちた

「目が、あつくなった。のどが、つまった。」という体の変化の描写に注目してください。泣くことへの言及はなく、ただ身体に起きていることが書かれています。子どもが泣くとき、そこには必ず理由があります。「なぜ泣くの」より、「体がそうなったんだね」と受け取ると、子どもの内側が少し開きやすくなります。

4. 親子で話してみたいこと

絵本を読み終えたあと、もしお子さんと話す時間があれば、こんな問いを置いてみてください。

・「リクは、どうして靴をはかなかったのかな?」
・「お父さんの『くつ』って、どんな声だったと思う?」
・「でも、最後、胸の中は温かかったね。なんでだろう?」

答えを出す必要はありません。問いを置いて、一緒に黙るだけでも、子どもの中で何かが動くことがあります。

「どうして?」と聞く前に、まず子どもの体の状態(足が冷たい、目がうるんでいる)に気づくことが、声かけを変えるきっかけになることがあります。

5. 関連する物語

同じ場面を、別の視点でも描いています。あわせて読むと、「届かなかった言葉」の立体的な姿が見えてきます。

大人編 第3話「どうして」──父の側で起きていた戸惑い
ナオ編 第3話「どうして」──答えが出ないまま歩き続けた時間

※ この物語は、診断や治療、支援方針の代替ではありません。困りごとが続く場合は、専門の医療機関・相談機関にご相談ください。


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