このページは、リク編 第1話「早くして」の絵本ページです。「早くして」と言われたとき、子どもの中で何が起きているのかを、玄関でくつをはく場面から描いています。絵本を読んだあとに、ことばのページ・本文書き起こし・保護者向けの読み取りメモもあわせてご覧いただけます。
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ことばのページ|読み終わったあとに親子で話す問い
リクの足は、
どうして止まったのかな?
「早く」と言われたとき、
リクの中では、
べつの時間が、
流れていたかもしれない。
コーキは、なにも
言わなかったね。
ただ、しゃがんで、
くつの中を見ただけ。
ベロが、すこし、
ずれていたね。
📝 本文書き起こし
リクは、げんかんにいた。
くつを、はこうとしていた。
コーキは、ドアのそばに立っていた。
ルリは、げんかんのすみで、丸くなっていた。
右の足は、もう入っている。
左の足は、まだだった。
くつの中が、少し暗かった。
リクは、足を入れようとして、止まった。
「リク」
おとうさんの声がした。
「早くして」
その言葉で、
リクの体が、少しかたくなった。
ルリが、立ち上がった。
しっぽを、ゆっくりふった。
リクは、ルリを見た。
それから、くつを見た。
コーキは、何も言わずに、しゃがんだ。
くつの中を、そっと見た。
ベロが、少しだけ、ずれていた。
コーキは、手を近づけて、
少しだけ、ふれた。
リクは、足を入れた。
すっと、入った。
「……はい」
コーキは、小さく言った。
おとうさんは、息をはいた。
「行くぞ」
リクは、うなずいた。
外に出ると、風がふいていた。
ルリは、先に歩き出した。
コーキは、となりを歩いた。
少しして、「……あるよな」
それだけ言った。
リクは、言葉にしないで、歩いた。
足は、前に出ていた。
📖 保護者向けの読み取りメモ
第1話「早くして」は、急かされたリクが玄関で動けなくなる場面を描いています。読み終えたあとに、子どもと一緒にもう一度ページをめくるためのヒントをいくつかお伝えします。
1. なぜリクは、止まったのか
外から見ると、リクはただ動いていない子どもに見えます。けれど絵本では、ちゃんと理由が描かれていました。くつの中のベロが、少しだけずれていたのです。本人もはっきりとは言葉にできないけれど、内側では「何か違う」という感覚が動いていました。
「早くしなさい」と急かしたくなる場面で、実は外から見えにくい小さな引っかかりが止まる理由になっていることがあります。
2. コーキは、何をしたのか
コーキは、ことばで急かさずに、ただしゃがんでくつの中を見ました。声をかける前に、見る。それだけで、止まっていた動きが動き出しました。「やってあげる」のでも「指示する」のでもなく、ただ手を近づけて、少しだけふれる。その距離感が、リクの足を前に出させる助けになりました。
3. 親子で話してみたいこと
絵本を読み終えたあと、もしお子さんと話す時間があれば、こんな問いを置いてみてください。
・「リクの足は、どうして止まったのかな?」
・「コーキは、なにも言わなかったね。なんでだろう?」
・「あなたも、止まっちゃうとき、ある?」
答えを出す必要はありません。問いを置いて、一緒に黙るだけでも、子どもの中で何かが動くことがあります。
忙しい朝ほど、子どもが止まった理由をすぐに決めつけず、まず足元・服・持ち物など小さな違和感を確認してみると、声かけが変わることがあります。
4. 関連する物語
同じ朝を、別の視点でも描いています。あわせて読むと、「届かなかった言葉」の立体的な姿が見えてきます。
・大人編 第1話「早くしなさい」──父の側で起きていた焦り
・ナオ編 第1話「早くしなさい」──子どもの内側で止まっていた時間
・大人編 思想章「言葉が速さになるとき」──「早く」が「圧」になる構造
※ この物語は、診断や治療、支援方針の代替ではありません。困りごとが続く場合は、専門の医療機関・相談機関にご相談ください。
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