このページは、リク編 第8話「わるくないのに」の絵本ページです。白いままのノートを見つめるおとうさんの前で、理由のわからない涙が出るリクを描いています。絵本のあとに、ことばのページ・本文書き起こし・保護者向けの読み取りメモを掲載しています。
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本文書き起こし
家の中は、しずかだった。リクは、自分のへやにいた。
机の上に、ノートがあった。学校で、つかうノートだった。表紙に、名前だけ、書いてあった。
リクは、ノートを見た。ひらかなかった。ひらかなくても、中がどうなっているかは、わかっていた。まっしろだった。
ノートは、いつも、そこにあった。でも、ページは、進んでいなかった。
リクは、ノートを、少しだけ、ずらした。そのとき、足音がした。
おとうさんが、へやの前で、止まった。しばらく、なにも、しなかった。机の上の、ノートを、見た。
「……あ」リクは、声を出しかけて、やめた。
おとうさんの手が、少しだけ、動いた。でも、ノートは、取らなかった。ただ、表紙を、見ただけだった。
おとうさんは、なにも、言わなかった。言葉を、さがしているみたいだった。でも、見つからなかった。
リクは、下を向いた。なにも、言えなかった。目のあたりが、あつくなった。どうしてかは、わからなかった。
わるいことを、したわけじゃなかった。でも、なみだが、出た。ぽとっと、机の上に、落ちた。なみだは、しばらく、止まらなかった。
そのとき、遠くで、ネコの鳴き声がした。高くもなく、低くもなかった。リクは、顔を上げなかった。なみだは、すぐには、止まらなかった。
保護者向けの読み取りメモ
第8話「わるくないのに」は、白いままのノートをおとうさんに見られたとき、リクの涙が出る場面を描いています。ここで大切なのは、リク自身が「わるいことをしたわけじゃなかった」と感じていることです。それでも涙が出る。理由を説明できない感情が、言葉より先に体へ表れる場面として読むことができます。
1. 開かなくても、白いとわかっている
リクはノートを開きません。けれど、中が真っ白なことはわかっています。見ていないのではなく、見なくてもわかるほど、その状態を気にかけていた可能性があります。外から見える空白のページと、本人の中に積み重なった意識は同じではありません。
2. おとうさんの手が動いて、止まる
おとうさんはノートを取らず、表紙を見るだけです。言葉もすぐには出ません。この短い動きの中に、確認したい気持ちと、どう声をかければよいかわからない迷いが並んでいます。リクは、その沈黙や視線も受け取っています。
3. 「……あ」の先にあったもの
リクは声を出しかけて、やめます。何を言おうとしたのかは書かれていません。言い訳や説明がなかったのではなく、言葉になる前のものが途中で止まったと見ると、沈黙の内側が少し見えてきます。
4. わるくないのに、涙が出る
涙には、いつも一つのわかりやすい理由があるとは限りません。ノートのこと、視線、沈黙、自分でも説明できない気持ちが重なり、体が先に反応することがあります。「なぜ泣くの」と理由を急いで求める前に、理由がまだ形になっていない状態そのものが描かれています。
5. 遠くから聞こえる声
最後にネコの鳴き声が聞こえます。涙はすぐには止まりません。声が聞こえたから解決するのではなく、泣いている時間の外にも世界が続いていることが、静かに置かれています。止まらない涙をすぐに変えず、そのままの時間に寄り添う余白が残されています。
関連する物語
同じテーマを、別の視点でも描いています。
・大人編 第8話「わるくないのに」――子どもの涙を前にした大人の側から
・ナオ編 第8話「わるくないのに」――理由より先に動いた感情の内側から
※ 本記事は医療的な診断や治療、個別の支援方針の代替ではありません。困りごとが続く場合は、学校・自治体の相談窓口・発達障害者支援センター・医療機関などにご相談ください。
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