このページは、リク編 第7話「集中できない」の絵本ページです。宿題をやろうとしているのに、鉛筆も時間も止まったように感じるリクの静かな時間を描いています。絵本のあとに、ことばのページ・本文書き起こし・保護者向けの読み取りメモを掲載しています。
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本文書き起こし
家の中は、静かだった。リクは、机に向かっていた。宿題を、ひらいていた。
鉛筆を、にぎった。先は、紙の上にあった。でも、動かなかった。
一行目を、読んだ。もう一度、読んだ。同じところだった。
時計を、見た。まだ、そんなに進んでいなかった。
鉛筆を、にぎり直した。紙に、先が、ふれた。でも、線は、出なかった。
頭の中で、なにかを、考えようとした。でも、なにを考えればいいのか、わからなかった。ページは、ひらいたままだった。
「リク」おとうさんの声がした。「まだ、そこか」リクは、うなずいた。うなずいたけれど、言葉は、出なかった。
やろうとしていた。やっていない、つもりはなかった。でも、紙の上は、白いままだった。
また、時計を、見た。さっきより、少しだけ、進んでいた。リクは、鉛筆を置いた。置いたけれど、机からは、立たなかった。時間だけが、静かに、すぎていった。
外は、明るかった。家の窓のそばに、ルリがいた。中を、見ていた。動かなかった。リクは、気づかなかった。
しばらくして、道の向こうから、足音がした。コーキだった。ルリを、見つけて、少しだけ、立ち止まった。家の中は、見なかった。
「ルリ、帰るぞ」それだけ、言った。ルリは、一度だけ、窓の方を見た。それから、歩き出した。コーキは、あとを、ついていった。家の中は、まだ、静かだった。
保護者向けの読み取りメモ
第7話「集中できない」は、宿題を前にしたリクの時間を描いています。鉛筆を持ち、ページを開き、同じ行を読み直しているため、リクは何もしていないわけではありません。それでも紙には線が出ず、外からは止まって見えます。ここで描かれているのは、やる気の有無だけでは説明できない、始めるまでの難しさです。
1. 準備ができても、動き始められない
宿題は開かれ、鉛筆の先も紙の上にあります。行動の準備は整っています。それでも動きません。「まだ始めていない」と見える場面にも、本人の中では始めようとする動きがすでに起きている場合があります。準備と実行の間にある見えにくい距離が、この場面に表れています。
2. 同じ一行を読み直す
リクは一行目を読み、もう一度読みます。文字を見ていても、意味を受け取り、次の行動へつなげるところまで届かないことがあります。読んでいないのではなく、読んだものを次の動きへ変えられない状態として見ると、止まっている時間の中身が見えてきます。
3. 「まだ、そこか」が届いたとき
おとうさんの言葉に、リクはうなずきます。時間が進んでいることも、宿題が進んでいないこともわかっています。言葉が届いていないわけではありません。ただ、わかることと動けることが、同じ速度では進まない場面があります。返事が出ない沈黙にも、説明できないまま受け止めている時間があります。
4. 「やろうとしていた」という内側
物語には「やろうとしていた。やっていない、つもりはなかった」とあります。結果だけを見ると白い紙が残っていますが、本人の内側には試みがあります。ここに注目すると、「集中していない」という評価と、リク自身の感覚とのずれが見えてきます。
5. 窓の外に置かれた静かな視線
ルリは窓のそばで中を見ています。コーキは家の中を見ず、ルリに声をかけて歩き出します。問題を解決する言葉は置かれません。家の中で時間が止まったように感じているリクと、外で静かに待つルリ。その二つの時間が並ぶことで、すぐに動けない時間も、誰かの視線の中にあることが描かれています。
関連する物語
同じテーマを、別の視点でも描いています。
・大人編 第7話「集中できない」――進まない宿題を見つめる大人の側から
・ナオ編 第7話「集中できない」――止まって見える時間の内側から
※ 本記事は医療的な診断や治療、個別の支援方針の代替ではありません。困りごとが続く場合は、学校・自治体の相談窓口・発達障害者支援センター・医療機関などにご相談ください。
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