約束の時間が近いのに準備しない子へ|「早くして」から変えた声のかけ方

約束の時間を前に玄関で準備する高校生と、時計を確認する父親 保護者の実践ノート

友達と遊びに行く約束の時間が近づいているのに、子どもの準備が進まない。

親である私は時計を見ながら、何度も言っていました。

「早くしないと遅れるぞ」

けれど子どもは、それまでと変わらないペースで準備を続けます。急いでいるようには見えませんでした。

私の中には、「友達との約束なのだから、遅れないように急ぐのは当然だ」という考えがありました。しかし、その切迫感は子どもと共有できていなかったのだと思います。

現在、子どもは高校生です。わが家の子どもには発達特性があります。時間の見通しと、その時間に合わせて行動を始めることが、うまく結びつかないように見える場面がありました。

ただし、ここで紹介する出来事を発達特性だけで説明できるとは考えていません。同じような特性があっても、困り方や伝わりやすい方法は一人ひとり異なります。

この記事では、「早く」と急かすだけだった私が、「何時から準備する?」と本人に尋ねるようになった経緯を書きます。

本人が開始時刻を決めれば、すべて自分でできるようになった――という成功談ではありません。決めた時刻になったときには、やはり親からの声かけが必要でした。

それでも、一方的に急かす状態から、準備を始める時間を親子で共有する状態へ少し変わりました。

この記事は、すべての子どもに当てはまる対応方法を示すものではありません。ひとつの家庭で試した工夫としてお読みください。

「早くしないと遅れるぞ」と言っていた

友達と遊びに行く約束がある日でした。

約束の時間は近づいています。しかし、出かける準備はまだ終わっていません。

私は時計を見るたびに落ち着かなくなりました。

「早くしないと遅れるぞ」

そう伝えても、子どもの準備のペースはあまり変わりません。

当時の私には、遅れることへの切迫感がないように見えました。「友達を待たせることになる」「約束を守れなくなる」と考え、さらに言葉を重ねました。

けれど、親が焦っていることと、子どもが今の時刻から遅れを予測して行動を変えられることは、同じではありませんでした。

「早く」という言葉は、急いでほしいという私の気持ちは表していても、いつから何を始めれば間に合うのかまでは伝えていなかったのです。

約束の時刻ではなく、準備を始める時刻を聞いた

それからは、約束の時刻を確認したときに、もう一つ尋ねるようにしました。

「何時から出かける準備をしたらいいと思う?」

何時に家を出るのか。そのためには、何時から準備を始めるのか。

親がすべて決めて伝えるのではなく、まず本人に考えてもらうようにしました。

ここで大切だったのは、「正しい時刻を答えられるか」を試すことではありません。

約束の時刻と、準備を始める時刻は別であることを、一緒に確認することでした。

ただ、開始時刻を決めたからといって、その時間に自分から準備を始められたわけではありません。決めた時刻になったときには、声をかける必要がありました。

以前の私は、本人が決めたのにできなければ、「約束したのに、なぜできないのか」と考えていたかもしれません。

今は、時刻を決めることと、実際に行動を始めることの間にも、支えが必要な場合があると考えています。

声かけが必要なら失敗、ではなかった

本人に考えてもらっても、親の声かけは残りました。

それだけを見ると、何も変わっていないように思えるかもしれません。

しかし、声かけの内容は変わりました。

以前は、親の焦りから出る「早く」でした。

その後は、本人と決めた時刻を確認するための声かけになりました。

例えば、次のように伝えます。

「準備を始めると決めた時間になったよ」

この言葉でも、すぐに動けない日はあります。それでも、「どうしてまだやっていないの」と責める言葉より、本人と共有した予定へ戻りやすくなります。

完全に声をかけなくてよくなることだけを、目標にしなくてもよいのかもしれません。

必要な声かけを残しながら、親が決めて急かす部分を少しずつ減らす。それも一つの変化だと思います。

わが家で変えた3つのこと

1.約束の時刻を事前に確認する

出発直前になってから急かすのではなく、約束の時刻を分かった時点で確認します。

「何時に約束しているの?」と尋ね、親子で同じ時刻を把握します。

2.準備を始める時刻を本人に尋ねる

約束の時刻だけではなく、準備を始める時刻を考えてもらいます。

本人が決めた時刻が現実的でない場合も、すぐに否定せず、「着替えには何分くらい必要かな」「家から待ち合わせ場所まで何分かな」と一緒に確認します。

3.時間になったら、決めたことを確認する

時間になっても動き出せない場合は、「早く」と速度を求めるより、本人と決めた内容を短く確認します。

「準備を始める時間になったよ」

それでも動けないときは、「最初に何をする?」と、次の行動を一つに絞って尋ねます。

「自分で決めたのだから、自分でできる」とは限らない

本人に決めてもらうことは、すべてを本人へ任せることではありません。

時刻を決められても、時計を確認し続けること、別の行動を中断すること、準備へ気持ちを切り替えることには、それぞれ別の難しさがある場合があります。

発達障害情報・支援センターでは、本人の状態に合わせて環境を整えること、視覚的な情報を用いること、課題を小さな段階に分けることなどが支援方法として紹介されています。

わが家で「何時から準備する?」と尋ねたことも、約束から出発までを一つの大きな課題にせず、「準備を始める時刻」という小さな区切りを作る試みだったと感じています。

ただし、約束前に準備が進まないという行動だけで、発達特性の有無を判断することはできません。また、本人の努力不足や親のしつけの問題と決めつけることもできません。

明日から試すなら、この一つ

同じような場面があれば、まず次の一言だけを試します。

「何時から準備を始めたらいいと思う?」

決めた時刻に、自分から動き出せなくても構いません。

そのときは、「決めた時間になったよ」と短く確認します。

それでも難しい場合は、次にすることを一つだけ一緒に決めます。

  • 着替える
  • 鞄を用意する
  • 必要な物を確認する
  • 家を出る時刻をもう一度見る

一度でうまくいくことを目指すのではなく、どこまで一人でできて、どこに声かけが必要だったかを見る。その積み重ねで、次に必要な支えが少し分かりやすくなります。

親の焦りを、子どもも同じように感じているとは限らない

私は以前、「遅れそうなのだから、急ぐのは当然だ」と考えていました。

けれど、親が時計を見て感じる焦りと、子どもが感じている時間は同じとは限りません。

「早く」と言ってもペースが変わらないとき、言葉を強くする前に、急ぐ理由と準備を始める時刻が共有できているかを確認する。

現在も、声かけが必要なことはあります。

それでも、親の焦りをそのまま渡すのではなく、本人と決めた時間へ戻る声かけに変わりました。

子どもだけが変わったのではありません。

「自分で決めたのだから、できるはず」と考えていた、親である私の見方も少しずつ変わっていったのだと思います。


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この記事は、保護者としての経験と公的機関の一般的な情報をもとにしたものであり、診断・治療・個別の支援方針を示すものではありません。困りごとが続く場合や、生活への影響が大きい場合は、学校、医療機関、地域の相談機関などへご相談ください。