このページは、リク編 第5話「手放せない」の絵本ページです。夜、布団の中で画面を消そうとしても手が戻ってしまうリクと、その翌朝の静かな歩みを描いています。絵本のあとに、ことばのページ・本文書き起こし・保護者向けの読み取りメモを掲載しています。
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本文書き起こし
部屋の電気は、消えていた。リクは、布団の中にいた。目は、つぶっていた。でも、ねむれなかった。
体は、あったかい。でも、頭の中が、しずかじゃなかった。
手が、動いた。布団のそばに、置いたはずのものが、もう、手の中にあった。
画面が、ついた。白く、ひかった。リクは、見た。指が、動いた。止めようとした。
一度、画面を消した。まっくらに、なった。でも、すぐに、また、ついた。
「もう、やめる」声に出さずに、思った。手は、動いた。
布団の中で、向きを変えた。目を、ぎゅっと、つぶった。でも、まぶたのうらが、さわがしかった。
扉の向こうで、小さな音がした。だれかが、歩いた気がした。リクは、布団を、少しだけ引き上げた。
画面が、また、ひかった。「あと、ちょっと」そう思ったかどうか、リクにも、わからなかった。
画面を消して、布団の外に、置いた。少し、間があいた。手が、ふと、動いた。
朝だった。カーテンのすきまが、明るかった。リクは、目を開けた。体が、少し重かった。
外に出ると、ルリが、もう歩いていた。ときどき、立ち止まる。また、歩く。リクは、あとを歩いた。
少し遅れて、コーキが、となりに来た。何も言わなかった。リクは、歩いた。
保護者向けの読み取りメモ
第5話「手放せない」は、夜の布団の中で、リクが画面を消そうとしながらも、また手を伸ばしてしまう場面を描いています。ここで中心にあるのは、単に「約束を守れない」「意志が弱い」ということではなく、やめたい気持ちと、手が動いてしまう感覚が同時にあるという内側の混線です。
1. 目はつぶっているのに、頭がしずかではない
リクは布団の中にいて、体はあたたかく、眠る準備はできているように見えます。それでも「頭の中が、しずかじゃなかった」。この一文に注目すると、外から見える姿と、本人の中で起きている状態がずれていることがわかります。眠る環境が整っていても、内側の刺激や不安、考えごとが止まらないと、体だけでは眠りに入れません。
2. 「もう、やめる」と思っている
リクは画面を見続けたいだけではありません。一度画面を消し、「もう、やめる」と声に出さずに思っています。ここには、本人なりのブレーキがあります。ただ、そのブレーキが行動を止めきれない。やめる意思がないのではなく、やめる意思だけでは足りない状態として読むと、場面の見え方が変わります。
3. 「あと、ちょっと」が自分でもわからない
「あと、ちょっと」と思ったかどうか、リクにもわからなかった。これは、子どもが自分の行動をうまく説明できない場面に近い描写です。理由を聞かれても、はっきりした答えが出てこないことがあります。そのとき、本人の中では、目的よりも手前にある刺激や落ち着かなさが先に動いている場合があります。
4. 朝の重さ
翌朝、リクの体は少し重くなっています。夜の行動は、その場で終わるのではなく、朝の感覚にもつながっています。ここでは「夜更かししたから悪い」とまとめず、夜に止まれなかったことが、朝の体に残っているという流れに注目できます。
5. 何も言わずに歩く時間
外に出ると、ルリが先に歩き、少し遅れてコーキが隣に来ます。コーキは何も言いません。この沈黙は、問題を見ないふりではなく、リクが自分の体の重さや朝の空気を感じるための余白として描かれています。すぐに説明や反省へ向かう前に、ただ並んで歩く時間が、子どもの中に残った緊張をほどくことがあります。
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・大人編 第5話「手放せない」――スマホの向こうにある本当の理由
・ナオ編 第5話「手放せない」――やめたいのに止められない夜に残っていたもの
※ 本記事は医療的な診断や治療、個別の支援方針の代替ではありません。困りごとが続く場合は、学校・自治体の相談窓口・発達障害者支援センター・医療機関などにご相談ください。
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