ナオ編・第9話 思想章
思想章:ひとりにしてほしい、わけ
ひとりになりたいときと、
ひとりではいられないときが、
同時に来ることがあります。
① この言葉が生まれる場面
人はときどき、
「ひとりにして」と言います。
話したくない。
触れられたくない。
今は関わりたくない。
大人にとっては、
距離を置きたいというサインに見えます。
けれど、その言葉が、
「完全に関係を断ちたい」という意味とは限りません。
② ナオの中で起きていること
ナオは、誰かが嫌いになったわけではありませんでした。
ただ、近い距離にいると、
感情がうまく保てない状態でした。
近いと苦しい。
でも、完全にひとりになると、落ち着かない。
そのあいだの距離が、
自分でもうまく見つけられていませんでした。
③ 外から見える姿と内側の違い
外から見ると、
距離を取る行動は、
拒絶のように見えることがあります。
離れる。
話さない。
その場を出る。
そうした行動は、
関係を断とうとしているように見えます。
けれど内側では、
関係を壊さないために、
距離を取っていることもあります。
近すぎることで、
感情が崩れてしまう前に、
少し離れて整えようとしている状態です。
④ この話に残るヒント
距離の取り方には、いくつかの形があります。
完全に離れること。
そばにいても関わらないこと。
同じ場所で、少し距離を置くこと。
その中で、
「そばにいるが、干渉しない距離」が、
感情の回復を助けることがあります。
何かを言うことより、
何も言わずにいられることが、
支えになる場面もあります。
⑤ ナオの中に残ったこと
ナオは、
「ひとりにしてほしい」と思いました。
でも同時に、
完全にひとりではいられませんでした。
そのあいだにある距離を、
少しだけ感じることができました。
次は、
「近いと無理」と言えるかもしれない。
まだはっきりしなくても、
距離を選べるかもしれないという感覚が、
この夜に残っていました。
距離は、拒絶とは限らない。
離れることは、関係を壊すこととは限らないのかもしれません。
⑥ こんな様子を、見たことはありませんか?
「ひとりにして」と強い口調で言ったのに、
部屋のドアを完全には閉めない。
しばらく経つと、ふらっと様子を見にくる。
拒絶しているのでもない。
ひとりになりたい気持ちと、ひとりではいられない気持ちが、
同時に動いているだけ。
……そんな夜を、見たことはありませんか。
「ひとりにして」は、嫌いになったのではなく、
距離を取って整える時間が必要ということがあります。
でも、その距離は完全な孤独ではなく、
戻れる場所がある距離だったりします。
ナオの中で起きていたのも、その離れたいけど切れたくない時間でした。
⑦ 内側を見るときの、観察ポイント
① ドアの開き具合
完全に閉めるか、少し開けておくか。
少し開いている場合は、完全に切りたくないサインかもしれません。
② 距離の取り方
部屋の一番奥の角まで離れるか、ドアのすぐ近くにいるか。
ドア近くにいるなら、気配を残しておきたい気持ちがあるかもしれません。
③ 戻ってくるタイミング
時間通りに戻るか、急に戻ってくるか。
急な戻りは、整理が早く進んだか、またはひとりが続かなかったサイン。
④ 戻ってきた後の会話
普通の話題から入るか、何か言いたそうにしているか。
後者なら、ひとりの時間で言葉になりかけた何かがあるかもしれません。
⑧ 同じ場面を、別の視点で読む
同じ場面を、別の視点からも描いています。
どれも、同じ世界の物語です。
- 大人編 第9話「ひとりにして」──父の側で起きていた寂しさ
- 大人編 第9話 思想章「距離は、拒絶ではない」──距離を回復の時間と捉え直す視点
- ナオ編 第8話「わるくないのに」──涙の前後で動いていた感情の物語
※ この物語は、診断や治療、支援方針の代替ではありません。
困りごとが続く場合は、専門の医療機関・相談機関にご相談ください。