ナオ編・第13話 補足ページ

ナオ編・補足

見守るということ

第13話では、
コーキは、声をかけませんでした。

気づいていないわけではなく、
見ていないわけでもありません。

それでも、あえて何も言わない、という選択でした。

「支える」というと、
何かをすることを想像しがちです。

声をかける。
アドバイスをする。
間違いを指摘する。

どれも大切な関わり方です。

ただ、
それが「今」なのかどうかは、
いつも同じではありません。

まだ言葉にできないとき。
近づかれると苦しくなるとき。

そういう時間には、
言葉よりも先に、距離が必要になることがあります。

何も言わないことは、
何もしていないことと、少し似ています。

でも、
その場にとどまること。
変わらず見ていること。

それもまた、
一つの関わり方です。

ナオは、まだ途中でした。

うまくできる日もあれば、
そうでない日もあります。

それでも、
少しずつ、自分で気づき始めています。

その途中に、
すぐに答えを置かないこと。

それが、
「見守る」という形になることもあります。


─── 補章 一 ───

見ている人にも、見ている時間がある

コーキは、声をかけなかった。
でも、それは「何もしなかった」ではない。

見ている、というのは、
ただ目を向けているだけのことではない。

呼吸を合わせる。
歩く速度を整える。
言葉を出すタイミングを、自分の中で何度も計る。

そのすべてが、
誰の目にも映らないところで起きている。

「見守る」と言うとき、
その人の中でも、別の時間が流れている。
それは、待つ時間でもあり、信じる時間でもある。


─── 補章 二 ───

リクからナオへ、ひとつの夜を渡す

第13話は、リクが歩いた道の続きにある夜です。

絵本の中のリクは、
言葉にならない時間を、絵と短い文で残しました。

ナオは、その続きを生きています。
リクよりも少し大きくなり、
言葉を持ち始めた分、
かえって整理がつかない瞬間も増えていきます。

ふたりは、別人ですが、
同じ「内側の時間」を持っている、ということでもあります。

リク編から読んでくださった方は、
リクが歩いていた道のもう少し先に、
ナオの夜があると感じるかもしれません。

ナオ編から読んでくださった方は、
ナオの内側にあった「まだ言葉にできない時間」が、
リクの中にもあったかもしれない、と思うかもしれません。

第13話は、その二つの時間が静かに重なる場所として書かれました。


─── 補章 三 ───

あなたも、誰かに見守られた時間がある

「見守る」というのは、
誰かが誰かにすることだけではありません。

子どものころ、
言葉にできない夜を過ごしていたあなたの隣にも、
何も言わずにいてくれた人がいたかもしれません。

それは親かもしれないし、
祖父母、先生、近所の誰かかもしれない。

その人は何かをしてくれたわけではなく、
ただ、そこにいてくれた。

その「いてくれた」という時間が、
あなたの中に、いまも残っているかもしれません。

ナオを見守るコーキの姿は、
かつて誰かに見守られたあなたの記憶と、
どこかで重なるかもしれません。


─── この物語の前後を読む ───

🎨 リク編 第13話「まだ知らない場所」
絵本でたどる、ナオの少し前の時間

💭 ナオ編 第13話「まだ知らない場所」
同じ夜を、ナオの内側からたどる本文

📖 大人編 第1話「早くしなさい」
同じ世界を、父の側から見直す物語

※ この物語は、診断や治療、支援方針の代替ではありません。
困りごとが続く場合は、専門の医療機関・相談機関にご相談ください。